第60巻 水 対決 美味しんぼ探偵団 by ぐるラビ
美食探偵団 > 食の安全を考える > 第60巻 水 対決 にいます。 第60巻 水 対決「究極のメニュー」と「至高のメニュー」の対決の打ち合わせ後、山岡たちは、三河に誘われ小泉局長、秀沢局長と銀座の高級クラブに入った。そこで、まず水を欲しいと頼むが、水道水で、とてもまずい。ミネラルウォーターをと言っても、空きビンに水道の水を詰めて出されたものだった。その足で、「よろず屋」に買い物に行く。と、そこには、ミネラルウォーターが、何種類も置かれていた。店長の野前からも、ミネラルウォーターがよく売れていると聞く。山岡は、「水道の水は臭くて飲めたものじゃないから」と言う。そういう自分たちも、浄水器をつけているのであった。 翌日、大原社主に、今回の至高との対決は、勝たねばならないという。そのためにもこちらに有利な題材を選ぼうとけしかけられる。 そして、山岡とゆう子は、結婚することを報告が したいと中松に呼ばれた。そば屋『そば次郎』で、美味しいソバを食べながら、中松たちののろけ話と聞いていた。ここのソバは美味しくて、中松や山岡たちが最高のそばだと感激したにもかかわらず、店主の羽田はついこのあいだ開店したばかりというのに、店を閉め富山に引っ越すというのだった。聞けば、ここの水の味に満足できないのだという。ソバを打つのも茹でるのも、茹で上がったソバをさらすのも、いい水が必要なのだと、羽田は言った。今は、水道水を大型の浄水器に通して、使っているものの、やはり満足のいくソバができないというのであった。この水だと、ソバの甘みが出せないのだと言った。 こうして、立て続けに水道の水のまずさを実感した山岡とゆう子は、「至高のメニュー」との対決の題材に「水」を選ぶ。それを大原たちに伝え、介して、雄山にも水で勝負したいと伝えてもらった。 「究極」対「至高」の次回のテーマを水にと望む山岡たちにたいし、雄山も受けてたつと答える。 一方、大原や小泉は、水なんかをテーマに出来るのかと疑問を山岡たちにぶつける。それに対し、山岡は、水道の水がまずいということに鈍感な人間が多いことが問題だと話す。それに補足して、水道の水がまずいという事は、何か体に悪いものが入っている可能性があるのだ。それに鈍感であれば、自分の体を守るという本来の能力が失われている可能性があるとゆう子が説明する。だから、次回のテーマに水を取り上げることで、真の水の味を知らしめたいと山岡は意欲を話す。 山岡の話を聞いて大原たちも納得するが、このテーマに取り掛かる前に、今の水道の水がどんな状況にあるのか調べて、どうすれば水道の水が美味しくなるのか答えを見つけるようにと大原から 命じられる。大原に言われたように、山岡たちも水の状況を調べようと思うが、どのようにすればよいかがわからない。そんな二人に、谷村が、水の環境の権威浦野教授を紹介してくれる。 浦野教授を訪れた山岡たちは、日本は水が豊かな国だと思われているが、総雨量を人口で割った一人当たりの雨量は、世界平均の5分の1という衝撃的な事実を聞かされる。浦野教授は、水の量が少ないから水がまずいのだと話し出す。日本の水道水は、基本的には、川の上流のほうのきれいな水を取り、浄水場で濁り分をとって、塩素で消毒することで事たりるはずなのだが、水の使用量が増えるにしたがって、最近では下流のほうの汚い水も使わざるをえないのだという。そのため、水に溶ける性質を持つ洗剤や、農薬、カビなどを取り除くためには、溶けているものも取れる活性炭を使った処理が必要になるのだが、それでもそれらの成分は完全に取れるわけではないと教授は説明する。そんな教授にたいし、ゆう子や谷村が、塩素で消毒するから、健康に心配はないし、安全でしょうと聞くと、浦野教授は、消毒のための塩素が実は健康を害するもとになっていると切り出すのだった。 谷村が、浦野教授に消毒のために入れている塩素がかえって毒になるとはどういうことかと訊ねると、山岡がトリハロメタンに気づく。トリハロメタンとは、水道に入ってきたそれ自体は毒性のない汚染物質が塩素と反応して出来た化合物が分解したものだが、発がん性があることが問題なのだと教授は話す。現在の方法では、かなり改善されているとはいえ、依然トリハロメタンへの心配があるのだという。 けれども、浦野教授は、厚生省が出しているいくつかの基準値の表を見せながら、これらの基準値はかなり厳しい値になっているから、現在の水道水の安全に過剰な不安を持つ必要はないとも教えてくれる。次に教授が見せてくれたのは、「各地の水道水変異原性レベル」の表である。これは、現在測定されていない有害物質が水道水の中に入っているのではないかと いう不安から、普通の状態では増殖できないが、突然変異を起こすと増殖できるようにした細菌を使った調査だと教授は説明する。その表を見ると、静岡などでは検出されていないが、人の集中する大都会では値が悪いことがわかり、山岡たちはあらためて驚く。安全な水を手に入れる難しさに嘆息する山岡たちに、教授は、水道水を5分以上沸騰させれば、カルキ臭さもなくなり、トリハロメタンも揮発し、突然変異物質も分解するので、簡単に安全な水が手に入ると教えてくれる。 最後に、教授は、基本的には水源をきれいにしなければならないことを強調する。そのためには、合併浄化槽や下水層を普及させ、汚水の処理を完全にすること、農薬、特にゴルフ場の農薬を減らすこと、水の無駄遣いをしないこと、水質保全するのは環境保全が一番大事なので、環境問題を解決することが早急に必要だと教授は締めくくる。 山岡たちから報告を聞き、大原たちも、水道水を美味しくするためには環境保全が必要だということを再認識する。そして、次回の対決では、是非勝利してもらいたいと話す。そんな大原たちに山岡は、勝負の前に今回は試食会を開くと話す。 後日、山岡は大原たちを誘い、山登りをする。そして、山の中を流れる清水のそばに毛氈を引く。そこで、「究極のメニュー」の料理として、大原たちの前に出されたのは、なんと冷や飯に冷水をかけたものだった。 水かけ冷やご飯を見て、大原と小泉は最初は激怒するが、谷村が美味しそうに食べるのを見て、自分たちも食べてみるとその美味しさに驚く。美味しいご飯を冷やし、匂いを消し、そこに美味しい水をかけることで、ご飯の甘味、旨味が水から溶け出し、より美味しさが増すこの料理は「究極のメニュー」にふさわしいと大原たちも認めるが、谷村が、この料理では次回の対決は駄目だと異を唱える。 何故だといぶかる一同に、谷村はこの料理を先日、京極の家でご馳走になったと話す。そして、京極に、この料理を教えたのは雄山だと聞いたと皆に話す。その事情を聞いた大原たちも、審査員の一人でもある京極は率直な性格だから、この料理を食べたら、黙ったままにしておくことはないだろうと話し、別の新しい料理を用意するように山岡とゆう子に命じる。 山岡は、 以前読んだ本の中で、ある禅宗の僧侶が冷や飯に水をかけて食べるのが一番うまいといって食べていたと書かれていたので、自分で試しこの味にたどりついたのにと肩を落とす。そんな山岡を見て、ゆう子は、雄山と山岡はきっと同じ本を読んで同じ味にたどりついたのだからやっぱり親子ねと話し、山岡を憤慨させる。 さて、新しい料理だが、あまりにも水かけ冷やご飯に自信のあった山岡には、他の料理が何も思い浮かばない。困り果てた一同は、岡星の力を借りることにする。さて、「岡星」を訪れた山岡たちに、岡星は、まともな料理人なら水のことを考えないわけはないと話す。良い水がほしいというのは、料理人としての切実な願いだといいながら、岡星が山岡たちの前に並べたのは、スズキの刺身である。そして、ガラスの器に張った水が出される。岡星のなぞかけに、一同はとまどうが、しばらくして山岡とゆう子が同時にその答えがわかるのだった。 「岡星」から帰り、山岡が岡星のスズキの料理を誉めると、ゆう子が、あの料理では水かけ冷やご飯のような衝撃的な訴求力が欠けているのではと不安を口にする。けれども、山岡が、水かけ冷やご飯のようなものを雄山が出した場合、それに対処するには旨味を加えるしかないから、スズキの料理が一番適していると話すと、ゆう子も納得する。が、一抹の不安が残る。 さて対決当日、まず、「究極のメニュー」側から料理が出される。料理を出す前に、ゆう子が、今回の方針を説明する。ゆう子は、水は、人間にとって根源的なものなのに、現在では環境破壊により水の質が以上に劣化していると話し、水の問題をこのままにしておいては、「究極のメニュー」を後世に残してもむなしいと話す。そして、本当にすばらしい水の持つ味をきわめて、「究極のメニュー」に取 り入れて残すことで、その味を保つことを目標設定し、環境保全を進めていきたいと結び、料理を披露する。その料理とは、スズキの洗いである。 その美味しさを絶賛する審査員にたいし、山岡は、洗いの美味しさは魚の身が吸い込んだ水の美味しさだと説明する。美味しい水を使えば、洗いがこんなにも美味しくなるのを知った審査員たちは、水が美味しい料理を作るのにどんなに大切なものかを深く感じとる。 次に、「至高のメニュー」の料理が出される。それは、なんと、花瓶に活けられたバラである。驚く一同を前にして、雄山は、オーストラリアでバラの花の芯にたまった露を飲んだときの感動を話す。雄山の勧めで、雄山が人工的に再現したバラの花のつゆを飲んだ審査員は、まさに甘露というべき水の味に驚愕する。雄山は、続けて、水の問題は大地の上だけでなく、水が大地と循環している大気の問題も考えるべきだと話し、一同を感心させる。 いよいよ審査結果が発表される。審査の結果、今回はどちらも非常に重要な提案だと評され、引き分けになるのだった。 |
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